13.書評:ロバート・B・ライシュ 『最後の資本主義』

ロバート・B・ライシュ『最後の資本主義』(東洋経済新報社 2016年)の原題は『資本主義を救えsaving capitalism』。1990年代にクリントン政権の労働長官を務めた筆者が、21世紀の米国について、余りに金持ちに有利に偏った社会ルールを危惧して「このままでは資本主義が崩壊する」との危機感をもって書かれた著書だ。レーニンが「ブルジョア民主主義はブルジョアジーの独裁に過ぎな」いと口を極めて非難(『プロレタリア革命と背教者カウツキー』)してから100年、今や世界帝国の中枢にいる資本主義者ですら「これはないだろう」と言わざるを得ないほど不平等と格差が深刻化しているのだ。読むとグローバリゼーションによって日本社会も一周遅れでこの現象が進んでいることに気づかされる。格差を拡大する現代資本主義を徹底的に批判していかなければならない。

1、金持ちに有利に変容するルール

 以下、著書の内容をみていこう。

 ライシュは、規制緩和の実態は「規制撤廃」ではなく、「再規制」ともいうべき金持ちに有利な社会的ルールへの変更であると指摘する。それがいわゆる「小さな政府」ということではないとして、2008年リーマンショック時の大銀行救済を挙げている。2013年時点で10大銀行への隠れた補助金830億ドルはその賞与総額267億ドルの3倍に昇る。米国5大銀行の資産が全米銀行資産全体に占める比率は200025%から201445%に上昇した。

 大企業・金融業界・個人資産家はロビー活動と選挙活動で影響力を拡大、富の再分配が「消費者・労働者・小口投資家」から「大企業・金融機関の重役・トレーダー・ポートフォリオマネジャー・個人資産家」へ向かっている。この流れは、2010年右派「シティズン・ユナイテッド」の起こした裁判で、連邦最高裁が企業の人格を認め、「言論の自由」を保障するとし、政治広告支出を制限した2002年法は憲法違反としたことで加速された。2012年の選挙費用は2410万ドルで20012年の9倍となっている。

 他方、2011年コンセプション夫妻のAT&Tに対する集団訴訟や2013年ベーレンド氏のコムキャストに対する集団訴訟では、最高裁は集団代表訴訟の原告適格性を狭める判決を出している。モンサント・コムキャスト・グーグル・アップル・GE・シティグループ・ゴールドマンサックス等は、訴訟戦略を駆使して業界への新規参入を阻止し、また自らに有利な判例を確定させている。州判事の87%は選挙で選出されるが、判事は企業からもらう金が多いほど企業に有利な判決を出すのだ。

 1975年までの高度成長期と現在を比較すると 大企業の最高経営責任者の所得は平均労働者の20倍から296倍へ、上位1%の総所得に占める比率は10%から20%へ拡大した。2014年企業利益は米国経済比で過去85年中最大になった一方、農業以外の労働分配率は2000年の63%から2013年には57%へと下降しているという。

 ライシュは経済活動について、①所有権、②独占、③契約、④破産、⑤執行の5つの視点から、そのルールが如何に金持ちに有利に変更されたかを説明する。われわれも日々の生活で都度経験しているところでもあるが、体系的な認識を持つことは重要だ。

 

①所有権

 所有権は歴史的のその概念を変化させてきた。18世紀末まで人類の4分の3以上が奴隷か農奴であったという。1850年、米国共和党は奴隷所有権を主張する民主党に対抗して結成された。当時、奴隷以外の最も価値の高い財産は土地であったが、次第に最重要のそれは企業所有へと移って行った。

 現在、特に重視されている所有権は、知的財産権だ。特許期間の延長が進み、179014年であったそれが、1995年には20年になった。

 ハイテク企業は特許法務にかなりの数の弁護士を充て、2012年グーグルはモトローラを買収することで17000件の特許を取得している。因みに最近の日本では、特許獲得のために武田薬品がアイルランド製薬大手シャイアーへの買収提案していることが話題になっている。

 製薬ビジネスについてみると米国では2014年に健保関連支出31000億ドルの10%が医薬品であり、1990年「自然物」のワクチン製造過程が特許可能になってからワクチンの特許申請が10倍増の1万件に達している。ファイザーは肺炎球菌ワクチン「プレベナー13」で40億ドル稼いだ。僅かな変更で特許を延長することをプロダクト・ホッピングというが、アルツハイマー薬「ナメンダ」は錠剤からカプセルへ変更されることで特許を延長、ジェネリック医薬品に対抗している。米国では国内販売薬を廉価に輸入することを禁止する一方、製薬会社が自社製品処方医師に報酬を支払うことやジェネリック製薬に対する「遅延料契約」を結ぶことを合法化(欧州では禁止)、これにより国民は35億ドルの負担増となっている。製薬会社のロビー費用は22500万ドルで軍需契約業者より大きく、2012年選挙には3600万ドル(3億円を超える)が献金されたという。

 因みに、ライシュの視点から離れて米国外の世界に出ると、途上国各国では何百万人もの人々が薬を入手できないでいる。薬価の高さはその大きな要因である。「人を救う」薬に特許をつけることで「人を殺している」のである。

著作権も延長が進み、米国建国当時、地図・海図・書籍にのみ著作権14年が認められていたが、183142年に延長、その後、190956年、1976年には死後50年、企業には75年と延長が続き、1998年のミッキーマウス法で95年となっている。昔の曲やキャラクター商品にいつまでも特許がついて回るのだ。

 

②独占

 再び資本の独占が進み、それらが政府への大きな影響力を行使している。

 米国はフロンティアの国のように言われるが、1978年から2011年までに新規企業の参入は半減している。ブロードバンド速度は遅く(韓国や香港の40%、世界28位)、料金も高い(世界23位)。地域的独占を形成するケーブル会社は光より遅い地中ケーブルを敷設、自治体に映像放映権料を支払って20州で自治体の光ケーブル敷設を禁止している。その結果、2014年現在、80%の米国人がケーブル会社1社に依存している。

農業においては、バイオ大手モンサントが大豆の90%以上、トウモロコシの80%の遺伝形質を所有し、雑草だけに効く除草剤とセットで販売する。モンサントの販売する種子は自身の種子を作らない。この結果、モンサントが種子を毎年独占的に販売し、生活費を優に上回る種子の高騰と多様性の喪失を招いている。モンサントは弁護士団を組織し、(モンサントの弁護士が最高裁判事になった!)あるいはロビー活動費700万ドル(2013年)を費やして遺伝子操作種子の知的財産権を高めている。

 IT(ICT)業界では、GAFA・twitterがプラットフォームを独占、2014年には米国人が最初に見るニュースはグーグルとフェイスブックとなり、消費者の3分の1がアマゾンにアクセスしている。2014年アマゾンは出版大手アシェト社へ圧力をかけ、自己に有利な取引に導いた。因みに日本でも、20183月、アマゾンジャパンが同社の通販サイトで販売した金額の15%を「協力金」として支払うようメーカーなどに求めていると「優越的地位の濫用」が報じられ話題となった。2013年のロビー活動費には、グーグル1580万ドル、アップル337万ドル、フェイスブック643万ドル、アマゾン345.6万ドルがそれぞれ支出されている。2012年に独占禁止法を司る連邦取引委員会はグーグル提訴を勧告したが不発に終わっている。1990年代に政府はマイクロソフトのOSを独禁法で提訴したことがあったが、今、アップルに対してそのようなことは起こることはないであろう。

 金融システム業界は、2014年には5大銀行の保有資産は全銀行の45%以上になった。19802014年の間に金融セクターは全米経済の6倍の成長を実現した。2008年の大統領選ではオバマへ金融業界から1660万ドル(業種中4位)の献金がなされ、その最大はゴールドマン・サックスであった。クリントン時代とジョージ・W・ブッシュ時代の財務長官は元ゴールドマン・サックス会長、オバマ時代の財務長官は元ニューヨーク連銀総裁。2008年まで投機の規制緩和が進行し、2008年リーマンショック後は大銀行と金融機関は政府・納税者から救済を受け、成長を続けた。

 保険業界は、米国経済の20%を占めるが1945年から独禁法の適用除外とされ、病院はシステム統合の結果、都市には約二つの大病院があるという状態である。

 

③契約

 不当な契約、詐欺や強制など不正な取引は違法であるが、何が不当で不正かが問題となる。米国では血液を売ることができ、子宮を貸すことができ、突撃銃を売買できる(カナダや欧州は禁止)。2010年まで、貧者の使用者が多いクラック・コカイン使用は、エリートの使用者の多い粉末コカインの使用より100倍刑が重かった(2010年以降は18倍)。

 

 20世紀以前は公務員へのロビー活は禁止されていたが、1960年に企業のロビー活動を最高裁が容認した。契約のルールも金持ちに有利に変貌しているのである。

 1934年証券取引法はインサイダー取引を禁止しているが、現在の超高速取引では事実上情報源は解らず、ウォール街のトレーダーが儲け、その分、一般人が損をしている。ヘッジフォンドマネジャー上位25人の所得は平均10億ドル、これは「極秘情報に対する投資家からの賄賂」とどこが違うだろうか。

 

 独占下では契約に真の選択肢はなく、強制と同じだ。大企業が従業員・フランチャイズ店・顧客に対する義務的仲裁合意結ばせている(従業員の差別では裁判では51%救済されるが、仲裁は21%しか救済されない)。従業員の競業者への就職禁止合意も拡大している。

独占されたプラットフォームでのネット契約では、「サイト所有者を提訴できない契約」「プライバシー権の放棄」に条文を読むことなく同意をクリックせざるを得ない。大企業のロビー活動で消費者・弱者保護規定は後退し、個人ローン利率は36%へと引き上げられた。

④破産

 破産は元来、人が最初からやり直すために設計された制度で、債権者に平等な損失を配分するものであった。しかし、今日ではやり直せるのは大企業と金融業者だけという様相だ。1984年トランプ・プラザがアトランティック・シティにオープン、30年後に倒産、トランプは丁度良いタイミングの撤収だとするが、勤務する関連労働者は苦境に投げ出された。

米国大手航空会社は、すべて過去20年に1回は倒産している。2011年アメリカン航空が倒産し従業員の年金プランを凍結した。その後2013年、アメリカン航空は債権者に全額返済をしている。労働協約を破棄するための戦略倒産だったのだ。因みに、2010年日航の会社更生法適用も独立系5労組への攻撃として利用された。

 2008年リーマンショック後、政府は大銀行に数千億ドルを投入、連邦準備制度理事会は830億ドルの低金利融資を実施した。他方、小口投資家と住宅所有者は重荷を負った。米国では住宅ローンの破産はできず、500万人が自宅を失い、20万人が差し押さえにあった。

もう一つ破産できないのは学費ローンで滞納は給料差し押さえとなる。学費ローンは米国では2014年までに住宅ローンにつぐ2番目(全債務の10%)のローンとなり、自動車ローンの8%やカードローンの6%を凌ぐ。

 2013年「自動車の街」として有名なデトロイトが破産した。小口投資家が損失を受け、労働者の年金と保険給付が削減された。ところでこの時点でデトロイトのほとんどの住民がアフリカ系、世帯収入の中央値2万6000ドル、子供の半数が貧困であった。その際、郊外オークランドの白人(世帯収入の中央値5万ドル)は痛みを分かち合うことはなかった40年前のデトロイトは富裕層・中間層・貧困層が混在していた。既に20002010年に中間層の4分の1と富裕層が郊外へ移転していたのだ。

⑤執行

 どんな法律があったとしても、実際はそれがどう執行されるかにかかっている。

 1988年、医薬品業界は「全国ワクチン障害保障プログラム」創設、副作用の責任から免責するシステムを築き上げた。2005年、全米ライフル協会は「武器の合法的取引保護法」を実現、銃被害から免責されることとなった。かつては自動車業界もタバコ産業も多額の損害賠償を支払わせられたことと比較すると、社会が企業に有利なルールに変貌していることが解る。

 福島原発事故に先立ち、1880年代GE(ゼネラルエレクトロニック社)のマーク1沸騰水型原発が加熱による炉心融解の危険性が90%であることが指摘されていたが、原子力規制委員会が放置することとなった。GEが2012年大統領選挙に400万ドル、ロビー活動費1900万ドルを使い、天下りロビイスト104人を抱えた「成果」である。

 規制を担保する行政の執行体制の空洞化が進んでいる。2010年メキシコ湾原油流出事故では、事故調査委員会がBPの油井設置について指導怠ってきたことが明らかになっている。2013年テキサス州ウエストで化学肥料工場が爆発して14人が死亡、200人以上が怪我したが、この工場に30年間立ち入り検査がなされていなかった。労働省安全衛生局と州レベルの労務担当部署の検査官は労働者59000人に1人しかいない。2013年は34000の交通事故死があったが、高速道路安全の予算は駐イラク大使3カ月分の警護費用分の予算しかない。「1ドルで200ドル回収できる」と言われる内国歳入庁の2014年予算は2010年より7%減、職員は111万人減となっている。金融規制改革法と抱き合わせで、執行政府当局の予算削減が進んでいるのだ。

 因みに、日本でも労働基準監督署の監督官、運送業界を監督する自動車監察官などが、違反の実態に対して余りに少数の人員しか保持しておらず執行力がないことは活動家には周知の事実である。

 また、法の執行は判決で骨抜きにされている。2010年、金融業界の弁護団がドット=フランク法に従い規制を行おうとする商品先物取引委員会を提訴、連邦控訴裁判所はこれを認め、議会の努力は阻止された。大企業・ウォール街の弁護士団に対して監査行政側は不十分な予算・体制しかない。因みに、日本でも20171024日、国税当局から申告漏れを指摘された自動車部品大手「デンソー」が約12億円の追徴課税処分取り消しを求めた訴訟で、最高裁がデンソーが逆転敗訴した2審判決を破棄し、処分を取り消す判決を言い渡している。

 違法であっても持てるものには痛くないもかゆくもない金額の罰金では統制できない。

 2013年JPモルガンは不動産担保ローンの不正販売で司法省に和解金130億ドルを支払い、2014年シティグループは70億ドルの和解金、バンクオブアメリカは1665000万ドルの和解金を支払っている。GMは点火スイッチの不具合で13件の死亡事故を起こして3500万ドルの罰金を支払い、2013年ハリバートンはメキシコ湾原油流失事故で刑事責任として20万ドルの罰金を支払った。SACキャピタルアドバイザーのスティーブン・A・コーエンは2013年年収23億ドル、20年間で110億ドルの富を蓄積したが、インサイダー取引で刑事告訴され、SACは18億ドルの罰金支払った。強大な金融機関や企業、超富裕層にとってこの程度の罰金は痛くもかゆくもない。株価にも影響はなく、上級幹部は訴追されていない。因みに、日本でも、独占禁止法に違反したゼネコンへのペナルティー、違法な長時間労働で過労死を生み出した企業への罰金、不正を働いて退職した官僚トップに対する懲戒処分が、かれらにとって何ら痛みを与える効果がないことが問題となっている。

2、米国の格差の実相と労組への攻撃

 最高経営責任者の報酬は一般社員比で196520倍、197830倍、1995123倍、2013296倍になり、1978年から最高経営責任者の報酬は937%上昇したが一般社員の報酬は10.2%上昇したに過ぎなかった。最高経営責任者の報酬ではストック・オプション(予定価格で株式購入)とストック・アワード(ある価格になると取引できる、)など自社株比率が増大し、自社株を買戻して利益を上げている。これは長期的には企業価値を損なう可能性を持っている。

 ヘッジファンド・マネジャーの所得番付上位25人の報酬は平均10億ドル、ハーバード大4年生の70%が金融機関とコンサルティング会社に履歴書を送る。上位1%の配当収入は197820%であったが200749%になり、値上がり益の75%を独占する。20013 ブッシュの税制改革で勤労収入最高税率39.6から35%へ下落、配当への課税は39.65から15%へ、相続税は実質的になくなったに等しい。値上がり益に対する課税は1980年代33%であったものが201423.8%になっている。寄付金は課税対象から控除されるが、2011540億ドルの寄付金のうち、貧しい人に使われるのはその31、他はエリート大学などへの寄付等に支出される。

 1930年代、民間労働者の30%以上が労組に加入、当時のブルーカラーは時給30ドルの交渉能力があった。しかし、経済成長と中間層の所得向上の好循環は1970年代までで終わり、1980年、世帯収入の中央値の伸びが止まった。2013年の中間層の世帯収入は1998年より少なく平均収入は8%減であった。ニューディールと大戦後の公共政策は1980年代に崩壊し、1980年に大中企業の80%に確定給付型退職金制度があったが現在ではそれは31になり、雇用に伴う年金も197950%以上あったものが現在は35%となっている。1979年以降労働者の生産性は65%上昇したが、報酬は8%上昇したにとどまる。多国間・各国間の自由貿易協定は知的所有権や金融資産を保護し、労働者の権利を侵食している。

 1965年当時の最大の雇用主はGMでその労働者の平均時給35ドルであったが、2014年の最大の雇用主はウォルマートとなり、労働者の平均時給は11.22ドルとなっている。ウォルマートは労組に敵対的な企業。民間の労組加入率7%にとどまる。

 1981年レーガンは国家航空管制官を大量解雇、2013年にアメリカン航空が労働協約を破棄するための戦略倒産。タフトーハートレー法(1947年制定)の労働権(クローズドショップ制の禁止とユニオンショップ制の制限)を適用する州が1980年代から拡大、企業は労働権のある州への移転を恫喝に労組にこれを認めさせ、組合員であることの利益を失わせた。現在、不当労働行為を監督する「全米労働関係委員会」は予算削減でおびただしい未処理案件を抱えている。日本での国鉄分割民営化による総評解体―労働委員会の救済命令の東京地裁による棄却と並行する過程と言える。

 現在、米国のワーキングプア4700万人、2014年最低賃金7.25ドルは実質で1996年より低い。2013年食料寄付プログラム利用者は4600万人でその半数以上が有職者とその家族である。失業手当を受け取る失業者は26%にだけである。

 2008年ショックでの失業者の22%がファストフードと小売店、その後の職創出の44%もファストフードと小売店、その平均年齢は201428歳、女性が3分の2を占める。ところでデンマークのマクドの賃金は時給20ドル、しかしビックマックの値段は0.35ドル高いだけである。

 2001年には懸命に働いて出世するチャンスがあることに満足する米国人は77%、不満は22%であったが、2014年には満足は54%、不満は40%となり、2015年、大半のアメリカ人がTPPに反対している。

 戦後、大企業と金融業界の権力を相殺する中枢として地域の商工会議所、地元エリート、軍人会・農協・労組などの全国組織の地域拠点が存在してきたが、1980年代から衰退、現在はコーク兄弟系列の献金は4億ドルで、トップ10労組の献金合計の2倍に昇る。選挙費用が急上昇しており、政党は資金調達マシーンとなっている。2014年、「平均的なアメリカ人の公共に及ぼす影響はゼロに近い」という調査研究が発表されている。引退した上院議員の半数と下院議員の42%がロビー活動し、上位0.1%の連邦選挙への献金は40%を占める。当選した政治家が意識するものは金融業界と富裕層なのだ。

 政治が腐敗していると感じる人は200659%から201379%へ、選挙の都度、投票先を変え不満を表明している。2014年、「大企業は悪である」と答えた人は51%、民主・共和党に変わる第三政党が必要だと答えた人も58%に昇る。

3、怒りを組織し、新しい社会を築こう

 

 こうして見てくると、資本主義の生産を拡大して成長を続けるというモデルが崩壊し、金融投機と格差の拡大で富裕層が利益を得ていることが解る。社会に矛盾と不満が増大し、現状ではそれがポピュリズムや排外主義という逆流現象を起こしているのだ。貧困が拡大しているのは金持ちに有利なルールが拡張しているからであって、移民や他国の脅威が増大しているからではない。私たちはこのことを暴露し、労働者階級の怒りと行動を組織していかなければならない。

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